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<h2>エグゼクティブ・サマリー</h2><ul><li>3月17日、23/1通期決算が発表された。着地はほぼ会社計画及び筆者予想線で、特段のサプライズは無かった。一方、24/1期計画に関しては、約20%増収増益と引き続き高伸が計画されているものの筆者予想より弱く、個人的にはややネガティブに映った。ただし、同業他社を含むバリュエーション水準から鑑みるに、潜在的なマーケットコンセンサスと筆者予想には相応の乖離があったと考えられるため、本稿では、①23/1通期実績レビュー、②24/1期計画の妥当性、③会社計画と筆者予想の乖離、の3点に切り分けて整理したい。</li><li>なお、会社計画には新規M&amp;Aやゲームの新規運営移管は織り込まれていない。一方で、これまでのトラックレコードとしては毎期何かしらの外部成長アクションがあり、一定のアップサイドは想定しておくべきと筆者は考えている。また、当社は総還元性向30%を目標に掲げているが、期初時点での配当性向は14.8%に留まっており、業況次第で23/1期同様に自社株買いが実施される可能性がある点は押さえておくべきだろう。</li></ul>&nbsp;<h2>23/1通期実績レビュー</h2><ul><li>通期では、売上高が前期比52.7%増の7,323百万円、営業利益が同98.4%増の462百万円と高伸した。Webソリューションの単価増を中心とした内部成長、ムービングクルー／Y’sの買収及び新規のゲーム運営移管といった外部成長が全社業績を牽引した。</li><li>4Q実績の特筆事項は、Webソリューションの①単価増、②生産性改善、に伴う収益性改善だろう。4Qの単価は4,506千円であり、前年同期比では＋458千円、前四半期比では＋139千円上昇している。活況な市場環境を背景に案件の大型化が進められていることが奏功していると見られる。 【Webソリューションの単価×数量の四半期推移】 <img src="https://d1jvrs8tyzyb2r.cloudfront.net/report/14/5e35H39jiMGFHAZXPTxeU/ef3f003b4c9faa2441543247a41b3149e.png"> 注：数量は、Webソリューション売上高（ムービングクルー分除く）を説明会資料で開示のある単価で除算した逆算値である。当該四半期に案件執行しPL計上のあった案件数の近似値と見ることが出来る。 出所：アピリッツIR資料より筆者作成</li><li>また、新卒を中心とした若年層の戦力化が進み生産性が改善、相対的に人月単価の高い外注費が削減できている。結果として、セグメント営業利益率は前四半期までの20%台後半から4Qに31.7%まで改善した。需要旺盛で人材確保に難のある受注ソフトウェア業界において、充実した教育体制で未経験者を戦力化する仕組みや風土があることが当社の一つの強みだが、その効果を着実に享受していると言えるだろう。 【Webソリューションの項目別売上原価と営業利益率の四半期推移】 <img src="https://d1jvrs8tyzyb2r.cloudfront.net/report/14/5e35H39jiMGFHAZXPTxeU/eae4a8f9f752b191efc98c7ff9d7b5f2f.png"> 注：23/1期はムービングクルーをPL取込している点に留意されたい。なお、22/1期はデジタル人材育成派遣に係る収益を除外した訴求修正値を参照している。 出所：アピリッツIR資料より筆者作成</li><li>一方、オンラインゲームの収益動向にはいくつかの留意点があった。まず、以下グラフの通り売上高がQoQで1億円以上減収しているが、これは3Qに「ゴエティアクロス」、「けものフレンズ3」、「ユニゾンエアー」と主要タイトルが全て周年イベントだったことの反動減であり、トップラインは”軟化”したのではなく”平準化”したのだと言える。基本的に既存ゲームは緩やかな減収を想定すべきだが、大きく落ち込んだわけでは無い点は押さえておきたい。 【オンラインゲームの売上高と項目別売上原価の四半期推移】 <img src="https://d1jvrs8tyzyb2r.cloudfront.net/report/14/5e35H39jiMGFHAZXPTxeU/e2b69fdb4dc82fb4d8825233dc82cf914.png"> 注：22/1期はデジタル人材育成派遣に係る収益を除外した訴求修正値を参照している。 出所：アピリッツIR資料より筆者作成</li><li>費用側では、外注費が3Q比でマイルドな減少幅に留まった点はややネガティブに映る。2Qより新規取込した「ユニゾンエアー」に係る稼働安定化のための一時的な外注費増は3Qにピークを迎えた後に4Qでは落ち着きを取り戻せた模様だが、その他の既存タイトルで計画通りの運営効率化が実現できず、外注費が嵩んだ模様である。この点は、進行期の四半期開示で状況を追う事項となるだろう。</li></ul>&nbsp;<h2>24/1期計画の妥当性</h2><ul><li>24/1期は、売上高が前期比19.3%増の8,734百万円、営業利益が同18.8増の550百万円が計画されている。外部成長要素は①新規M&amp;A、②新規ゲーム運営移管、ともに織り込まれておらず、既存事業のオーガニック成長、及び23/1期に新規取込した事業の通期効果、が主な増収増益の背景となる。</li><li>結論としては、売上高は十分に達成可能、営業利益はやや保守的に計画設定されていると見ている。23/1期に実施されたM&amp;Aや新規ゲーム移管といった外部成長が全てフル寄与している4Q業績は、売上高が2,059百万円、営業利益が161百万円であり、単純に×4すると8,237／645百万円となる。</li><li>仮にゲームで微減収を想定したとしても、特にWebソリューションやY’sのオーガニック成長が全社成長を牽引するだろうことを踏まえれば、少なくともダウンサイドリスクは低い計画に見受けられる。会社はWebソリューション（単体）で約20%増収、ムービングクルーは2桁成長、Y’sは前年度の成長性132%の継続を計画に織り込んでいる。また、テクニカル要素ではあるが、「けものフレンズ3」と「アルカ・ラスト」にかかる残存資産を23/1末に全額減損し、主に24/1期に計画されていた約40百万円の償却費負担が軽減されている点もサポート材料となろう。</li></ul>&nbsp;<h2>会社計画と筆者予想の乖離</h2><ul><li>筆者は従前、24/1期予想として、売上高9,214百万円、営業利益788百万円を想定していたため、会社計画は相応に低い印象を受けた。①前項記載の会社計画の保守性の他、②自社新作ゲームの更なるリリース延期（売上高約1億円を予想に織り込んでいたが24/1期は未貢献となる見込み）、③ゲームの周年イベント効果の調整漏れ（追い風参考記録の3Q実績をもとに24/1期予想を作成していた）、④ゲームに係る前提条件の違い（筆者予想ではNo nameの運営移管を一定織り込んでいるが会社は織り込んでいない）と、総じてゲーム事業の見通しズレが主な差異要因である。現段階では、②③に係る部分は予想を引き下げるべきだろうと考えている。改めて業況精査の上でアップデートを行いたい。</li></ul>&nbsp;【参考レポート】<ul><li><a href="https://ishare-emh.com/report/221">銘柄紹介｜未経験者戦力化の仕組みと収益・ROE水準の切り上がりに注目</a></li></ul>&nbsp;アピリッツの四半期業績表<figure class="image"><img src="https://d1jvrs8tyzyb2r.cloudfront.net/report/14/5e35H39jiMGFHAZXPTxeU/e33dfd798dab7b2566b27ae7bd8b702c1.png"></figure>&nbsp;&nbsp;